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LIKE VOL.14 Fumiko Aoyagi
自分は何が“好き”なのか。分かっているようで、実は分かっていなかったりする。
“好き”は、どんどん変わっていってもいい。
でも、今何を“好き”なのかは分かっているといい。
自分の“好き”をわかっている人たちが、ジョンブルを着こなしてくれる連載。
第14回は、モデル/青柳文子さん。

――どんな時間が、“好き”ですか?
今はオランダに住んでいるのですが、3年ぶりに子どもたちと長期で帰国しました。子どもの夏休みの間、1ヶ月半たっぷりと。3年の間、仕事の為に数日帰国することはありましたが、こんなに長く日本で過ごすのは久しぶりすぎて、もう異次元です。帰国して感じていることは、ずっと離れていても意外とみんな覚えていてくれるものだなぁと。みんなが私の写し鏡になっているとしたら、こんなにも素敵な友達がいるということは、きっと私も思ったよりもちゃんと人間関係を構築できていたのかもしれない…なんて思えました。素晴らしい友人たちがお帰りと歓迎してくれて、また仲良く楽しく話をしてくれたり、時間を割いてくれるということは、あながち私の人生これまで間違っていなかったのかもしれないと。移住によって一度、友人とのお付き合いがほぼゼロになったことによって、友達はやっぱり大事だなぁと改めてすごく思います。孤独な夜を紛らわせてくれているのは、やっぱり友達との電話だったりもするので。
この「EIFFEL」のような夜でもふらっと立ち寄れるおしゃれなお店は私が住む田舎にはないので、こういう空間で久しぶりの友人と会って他愛もない話で笑っていることが、東京での好きな時間です。


――オランダに移住したきっかけとは?
育児をするにあたってまず自分がストレスのない環境を作っておかないと、子どもにもいい影響を与えられないと思いました。自分が無理している暮らしの中で子育てをするより、本当にハッピーで余裕のある精神状態で子どもと関わりたかったんです。私は器用に色々なことを同時にできないので、仕事と子育てを両立してギリギリでやっていくことがなかなか難しく…、子どもと向き合うことに集中したかったんです。
色々な場所を移住候補として考えている中で、オランダに下見に行った時、まさに求めていたヨーロッパの牧歌的な風景が広がっていて、関わる人たちもみんな優しくて明るかったんです。教育制度なども知れば知るほど興味深く、この環境で子どもを育てたいと思いました。

――オランダでの暮らしはどんなところが“好き”ですか?
来てよかったなぁと毎日思っています。自分史上ベストな環境。私は視界から入る情報をわりと大事にしているのですが、目に映る全てがずっと好きなものであるということが、本当に幸せ。もう歩いているだけで、嬉しくて。田舎の村に住んでいるのですが、木漏れ日がキラキラしていて、牛や馬にいつでも会えて、静かで、朝から晩まで鳥のさえずりが聞こえて、蝶や蜂がふわふわ飛んでいて、花がゆらゆら揺れていて…、もう天国みたいなんです。寝る前に毎晩、本当に幸せだなと思いながら眠りについています。「幸せ…」って言葉に出しちゃうくらい。ちょっと気持ち悪いですよね(笑)。


――オランダの暮らしによって、ご自身に変化はありましたか?
ただ生きているだけで、それで幸せだと感じていいんだと思えるようになりました。私はオランダでは働いていませんし、社会に何かいい影響を与えたり、生産性のあることをしているとは実感しにくい。子育てしているだけでも、社会での重要な役割を担っているにも関わらず、最初はそれが罪悪感のように感じて、何かしないと!と思ってしまう自分もいたんです。東京での思考の癖が抜けず、自分の居場所やアイデンティティみたいなものに思いを巡らせたりもしていて。でも、そういう他者の視線や評価みたいなものがなくても大丈夫な自分でいられるように修行してきたという感じです。社会と繋がっている自分じゃなくても好きでいられるようでありたくて。修行の甲斐あって、今は息しているだけで幸せだと思えています。たとえ誰かから見たら「何もしてない人」と思われたとしても、別に良くない?と。花を育てているのですが、それがすごく楽しくて、生きているだけで毎日幸せという感覚になれました。


――自然に変化したというより、自分自身で「こんな風でいたい」という方向へと考え方や生き方を変えていった感じなんですね。自分が何を”好き”なのか、青柳さんはどうやって見つけられていますか?
やはり今までが表に出る仕事だからこそ、外からどう思われるか、どう見えるのかというところをとても敏感に気にしながら生きてきたので、そこから解き放たれたかったんです。だからこそ誰かから求められることに応える仕事を続けているうちに見失いがちな、自分が何を好きなのか、心地いいと感じるのか、という感覚みたいなものを取り戻したいとずっと意識してきました。私はもともと、自分の内面と向き合って、自問自答をするという癖があるんです。そして、よく違和感を感じるのですが、それはなぜだろう?と突き詰めていきがち。移住先を探す為に様々な場所を旅していた時も、「ここが嫌なのは何故だろう?」「ここは好きかもしれない。何故だろう?」と自問自答を繰り返していて、それによって自分の中に法則みたいなものを見つけていき、その法則に当てはまるところを探していたらオランダに出会えたという感じです。自然が好きだと言っても、まず、山がいいのか海がいいのか、から考えなくてはいけないんですよね。自問自答と、動いて体感することで、自分の感覚を探して見つけてきたという感じです。自分のことこそ意識しないと、みんな意外と分からなくなりませんか?
――それがこの連載のテーマでもあるんです。自分が何が”好き”なのか分からなくなってくる中で、一度立ち止まって、自分が何を「好き」だと感じるのか考えてみましょうという問いかけというか、お誘いみたいな感じです。
オランダ語の「I like」は、見つけるという単語が入り、“私の好きを見つける”みたいな表現なんです。英語の「I like it.」はオランダ語では「Ik vind het leuk.」なのですが、「vind」は英語の「find」にあたる動詞。この表現の仕方、すごく良くないですか?「好き」は「見つける」こと、それっていいなぁと思いました。
オランダの人たちは、「足るを知る」という感覚がくあるように見えます。もっともっと、と求めたり、どんどん発展させていくばかりが正解ではなく、すでにあるものに目を向けて価値を見出すことこそが幸せという感じがします。移住して、あえて発展させない人たちがいるということが新鮮でした。でもそんな価値観に触れることで、たしかに私も対外的な尺度で物事をみるのではなく、自分との対話で突き詰めることの大切さに気づけました。そしてそれが自分の好きなことや心地よさなどに気づくことにも繋がっていくんですよね。

――東京の印象、過ごし方などに変化はありますか?
以前東京に住んでいる時は、やっぱりすごく疲れていたんです。それに、何もかもが整っている状態、素晴らしい体験、素敵なものが溢れているということが当たり前になっていて、それの価値やすごさに気づけなくなっていた気がします。けれど、そういったものがない環境で暮らしていると、久しぶりの東京はもうキラッキラ(笑) もう全てありがたく思えますし、あらためてその価値がわかりますし、サービスも、建物も、この「EIFFEL」のような素敵なお店も、美味しい食事も、全ての背景にはそれらを切磋琢磨して作っている人たちがいる。その人たちの人生に想いを馳せると、私がオランダでのび太くんみたいに原っぱで鉛筆をくわえて寝っ転がっている感じとの対比がもうすごすぎて…! 本当に尊敬でしかないです。ありがとうという気持ち。日本人の美意識や繊細さなどを、改めて見させてもらったという感じです。もちろん頭では知ってはいたけれど、体感として感じられたことが嬉しいんです。

――着用しているデニムジャケットはどこが”好き”ですか?
ブラックデニムなので、どんなスタイルにもマッチしてとても便利でした。そのままカジュアルにボーイズっぽく着てもいいけれど、久しぶりの東京なので、ドレッシーなワンピースと合わせてみました。オランダの田舎では楽しめないスタイルをたっぷり東京で楽しんでから帰りたいって思っています。女性らしいワンピースにバサッと大きめのブラックデニムジャケットを羽織るだけで、こなれた感じになるのがとても嬉しい。とことんボーイズに着るのももちろん可愛いだろうし、色々気回せそうな1着だと思っています。


――こういう男女どちらにも合うアイテムは、いつか子どもたちも一緒に着れる日がきますね。
それは楽しみ。すぐ大きくなっちゃいますもんね。今まではワンオペしているという気分だったのですが、最近サンオペになったんです。子どもたちとお料理も一緒にできるし、洗濯物畳むのを頼めたりもして、彼らとはもうチームに。この間はお味噌汁を作ってくれて、頼もしいなぁと嬉しかったです。
――これからもずっとオランダで過ごしたいと思っていますか?
本当に毎日幸せなので、もちろんそうできたらいいなぁとは思っています。ただ、子どもたちが大きくなるにつれ様々な意思も出てくると思いますし、その都度相談しながら決めようかなと思っています。オランダでパワーが溜まったら、東京にたまに帰ってきて、お仕事をして友人に会って、またパワーを消費したらオランダに戻っていく、みたいなことができたら理想的。でも、いつか自分のエネルギーを自家発電できるようになったら、東京でも暮らせるような気がしています。今は1人でその修行の日々という感じですね。


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青柳文子
モデル
1987年12月24日生まれ、大分県出身。独創的な世界観とセンスで同世代女性から支持を集め、雑誌、映画、ドラマ、CMなどに出演。映画や旅行についてコラムを執筆、商品プロデュースなど様々な分野で才能を発揮している。二児の母。2021年に初のエッセイ本『あか』を出版。
映画『サッドティー』『知らない、ふたり』などに出演。
Location
EIFFEL
住 東京都世田谷区池尻2丁目31−17
営 15:00~0:00
休 木曜
Instagram https://www.instagram.com/eiffeljapon/
Photo : Yuri Iwatsuki
Edit & interview : Maki Kakimoto (Lita) @makikakimoto
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