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LIKE VOL.13 Teppei Suzuki
自分は何が"好き"なのか。分かっているようで、実は分かっていなかったりする。
"好き"は、どんどん変わっていってもいい。
でも、今何を"好き"なのかは分かっているといい。
自分の"好き"をわかっている人たちが、ジョンブルを着こなしてくれる連載。
第13回は、「青果ミコト屋」代表・鈴木鉄平さん。

――どんな時間が、"好き"ですか?
ご飯を食べている時間が好きです。"食べること"は、すなわち"生きること"。ひとりでも、大勢でも、どちらの良さもあるので、どんなシチュエーションでもいい。スタッフみんなでご飯を食べると、それだけで仲良くなれて、色々なものを共有できる時間だと思っています。「同じ釜の飯を食う」という言葉、やっぱり僕は好きなんですよね。1人の時は本当に何も考えず、自分の世界で好きなように味わう時間で、それも大好き。


――特に"好き"な食べ物とは?
僕は八百屋なのですが、とんかつが本当に大好き(笑)。とんかつは1人で食べに行くことが多いです。1人だからこそちょっといいとんかつ屋にも行くので、「また美味しいとんかつ食べに行ってる」と家族に思われないよう、SNSにもあげずにひっそりと(笑) 通っているとんかつ屋もあるし、旅先でも1回ぐらいはとんかつ時間は入れたいですね。
――いつからとんかつ"好き"に?
小さい頃から大好き。家で母ちゃんが揚げてくれるとんかつがすごく好きでしたし、高校時代にすごく好きで通っていたとんかつ屋が地元にあります。そこのマスターのとんかつが本当に好きでしたね。高校時代は10人、20人など大勢で行くことが多く、みんなそれぞれバラバラのものを頼むのですが、ほとんど同時に出してくれるんです。それがすごくプロフェッショナルだと思っていて。そのお店のとんかつだけでなく、そういうサービスの凄さみたいなものが好きでした。

――高校時代から、飲食やサービスというものに目がいっていたんですね。
たしかにそう。気配りや優しさみたいなものを食べ物を通じて伝えてもらえると、お腹だけじゃなく満たされますよね。そういうところが好きなんだろうなぁ。結局そういうものを求めていると、その先には「この食べ物はどうやって作られているんだろう」と知りたくなり、農家、酒造、醤油蔵などの作り手の方々を訪ねることを始めました。それがそのまま仕事になっているという感じです。


――全国の農家を巡り、生産者と消費者を「旅する八百屋」として繋いできた鈴木鉄平さん。2021年、青葉区梅が丘に自然栽培の野菜や果物、加工品の販売、ナチュラルアイスクリームの店「KIKI NATURAL ICECREAM」、野菜の仕分け場と倉庫、オフィスを備えた「青果ミコト屋」の実店舗である「Micotoya House」を構えました。
「旅する八百屋として実店舗がなかった頃、僕たちはとにかく生産者の方々のもとに足を運んでたくさん話し、直接パートナーシップを結んで、二人三脚でやってきました。けれど、例えば「急成長によって出荷先がない」「気候の影響で、出荷を急ぐ必要が出た」など、農家さんにいざ困ったことが起きた時、お店がないと買い取りができないんです。通販だから必要量が決まっていたので、そこにすごくジレンマがあったんです。やはりイレギュラーなことが起きた時、そのリスクを農家さんだけが背負っているということをすごく理不尽だと感じていました。恵はシェアしていただくのに、リスクはシェアしないなんて納得いかないなぁと。お店さえあれば、「とりあえず送ってください」と言えますからね。例えば今日はすごい量のズッキーニが積んでありますが、これはこういう理由で今すごく採れているんですよとお客様にお話しすることができることで、リスクと共に農家さんが野菜を育てているということも伝えられるんですよね。畑と食卓の距離を縮めるという立場にいるからこそ、そういう働きがけがしたかったんです。


――今日着用しているパンツはどこが"好き"ですか?
僕はやっぱりリラックスした感じが好きなので、ある程度きちんと様になるけれど着心地がいいというものを選びます。それにこのパンツは、タフな作りもいい。仕事で身体を動かすので、動きやすくタフであるということはとても大切なポイントかなぁ。淡い色味も好きなので、白いシャツを合わせて同系色でまとめました。買い物をするのはほとんど友人たちが作っているものばかりなので、新しいブランドを着るということも新鮮でした。自分のお金は社会が良くなる方になるべく流したいと思っているので、作り手を知っているものをなるべく買っているんです。


――鉄平さんにとって、フットサルも"好き"な時間とのこと。
色々な飲食仲間とフットサルを、月に1度平日の昼間にやっているんです。誰もがそうだと思うのですが、仕事をしていたり家族がいたり、常に何かしら考えてしまいますよね。でもフットサルをしている時間だけは本当に頭の中が真っ白で完全にニュートラルな時間になっているんです。フットサルチームの名前は「ESCAPE」。授業をエスケープするとか言いますよね。いったんいなくなるけど、あとでいつもの日常に戻ってくるねという、ちょっとした空白の時間。13時からフットサルを2時間して、その後みんなで街の銭湯に行って、それからトンカツを食べるというルーティン。「同じ釜の飯を食う」という話をしましたが、同じくパスを交換した仲間ってすごく仲良くなるんです。それぞれが何の仕事をしているとかもどうでもよくて、そういう肩肘張らない時間があることで、日常や仕事にも張り合いが出る。いったんエスケープするってすごく大事だなと思います。抜けることで、またぎゅっと締め直して仕事ができる。1ヶ月のうちで何よりも大事にしているスケジュールなので、1番初めにフットサルの予定を決めちゃいます。


――今までも"好き"なものは明確に自分の中にありましたか?
好きってことを考えたり意識したことはないけれど、思い返してみればいつだって何かに夢中になる時間というものがありました。高校卒業して大学に行ったのですが、本気でプロスノーボーダーになろうと思っていた時期が3年くらいあるんです。冬は仲間と一緒に山の近くに家を借りて、夢中になっていました。僕は挫折しましたが、その時の仲間の何人かはプロになりました。僕はすごく好きで夢中にはなっていたのですが、修行っぽい時間となってしまって、好きだと思えない時期もありました。懐かしいなぁ。
そう考えると、昔から変わらずずっと好きなのは、旅ですね。嫌いになったことがない。ライフワークになっているので、去年は3,40ヶ所行ったと思います。出店もすごく多いので。旅は予定不調和が好きです。もちろんスケジュールを組みますが、だいたい予定通りにはいかないですし、行き当たりばったりになるじゃないですか。良き出会いやトラブルもあって、そういうことが自分を強くしてくれる気がします。何か起きても、結果、ほら面白くなったじゃんという感じが好き。旅では、その土地のものを食べ、土地の水を飲み、土地の神社に行き、土地の水を浴びるということは必ずやっている気がします。
ずっと変わらず好きな、"食べること"と"旅"。その2つの点と点を繋いだ先に、今の仕事があるという感じですね。図らずとも。

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鈴木鉄平
「青果ミコト屋」代表
1979年生まれ。3歳までをモスクワで過ごし、帰国後横浜で育つ。
2010年、高校の同級生山代徹と共に「青果ミコト屋」を立ち上げ、店舗を持たず、全国の畑と食卓を巡る"旅する八百屋"として10年の活動の後、2021年 地元である横浜市青葉区に八百屋の実店舗をオープン。
規格外の青果やロスになる食材を活かしたクラフトアイスクリームのお店「KIKI NATURAL ICECREAM」も併設。
種と農について考え、それぞれの土地の在来種を味わう祝祭「種と旅と」世話人。
著書に「旅する八百屋」(アノニマスタジオ)がある。
micotoya house
住 神奈川県横浜市青葉区梅が丘7−8
【Open】
平日 11:00-18:00
土日祝 10:00-18:00
【Closed】
木曜
https://store.micotoya.com
Photo : Yuri Iwatsuki
Edit & interview : Maki Kakimoto (Lita) @makikakimoto
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